吉備國人
鈴木英治先生
社会学部・文化財修復国際協力学科
「人間の歴史」を後世にも伝えていきたい。
古文書の保存・修復に関する保存科学と材料科学
本は人間にとって貴重な財産。でもそうした本も、長い時が経つとボロボロになる。ページをめくっても穴だらけで、読みづらかったり。劣化した本をそのままにしておけばいたみは文字の部まで広がり、やがて全く読めなくなってしまう。これじゃあ、せっかくの貴重な知識が台無しだ。
 人類の貴重な財産である文書や書物を、読めなくなる前に何とかする。テーマ「古文書・書籍」の修復を専門とするのが、文化財修復国際協力学科の鈴木先生だ。
 「主に江戸時代から明治・大正・昭和の間に作成された文書・出版物・印刷物の修復に取り組んでいます。本だけでなく、戦前の映画のポスターなども対象の一つです」
 ともかく、どうやるのか虫くいの穴の修理作業を見せてもらおう。ページの穴の部分を型取り、型に合わせて修復用の紙を切り抜き、穴の部分に貼り合わせる…手順は意外とシンプルだ。
 「丁寧にやらないといけないので時間はかかりますが、作業自体は複雑ではありません。リーフキャスターという機械を使うと、手作業の何倍も早くできます。でも大事なのは、その前段階です」
 そもそも古文書と言っても、すべてが図書館で大事に保管されているわけではない。一般家庭のごく普通の本棚にある場合もあるし、ポスターなら外に張り出されていることが多い。しかも作られた時代で、使われた紙の質にも差がある。これらの条件が違うと、劣化の状態が全く変わる。
 「修復依頼で、同じ状態の文書は二つとないと言っても過言ではありません。その状態を観察し、どんな修復が適切か判断するのが難しい。おまけに『読める程度であればいい』という修復もあれば、『古くなった紙の色に味わいがあるので、色は変えずに修復だけ』と要望されるケースもあるんです」

 機械を使うと早いが、『古い味わい』までなくなることがある。こうなると、時間はかかるが手作業でいくしかない。二つとない状態の中で、どうやれば最適の修復ができるか。紙の素材に関する知識と、保存の技術について知識を融合させないと判断できない。
 「修復素材としては、丁寧につくられた手漉きの和紙が適していると言われています。和紙は劣化に強く、薄くても丈夫。海外の書物の修復材にも使うくらいです。でも新素材もどんどん出てますからね。試してみて、結果を蓄積する、の繰り返しが欠かせません」
 人間の歴史そのものと言っていい古文書を、後の時代にも伝えるため、鈴木先生の研究は続く。

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