2014 年 5 月 15 日

理学療法の本質を学ぶ

自分は、患者にとって意味のある理学療法を、本当にやったのであろうか?患者は、理学療法をやってもらって価値があった、と感じてもらえたのか?確かな理学療法をしていくために、患者のどのような情報を知り、どのようなプロセスで行ってきたのか?患者の気持ちをちゃんとつかんでいたのか?

卒業前の「臨床理学療法学」の科目で、学生が経験した臨床実習を振り返る授業を昨年から開始した。平上が初めて担当する科目であり、学生の反応をうかがいながら手探りで行ってきた。ただ「専門家教育は症例検討でしか語れない」ものがあると信じて、学生に正面から対峙してきた。一部の学生から難しすぎて分からないといった批判を感じながら、信念をもって自分自身の経験から培ってきた思いを伝えた。

その記録を担任の井上茂樹先生が冊子にまとめてくださった。それが写真に示す「臨床理学療法学 症例レポートの新たな取り組み」である。昨年度卒業された16期生が総合臨床実習を振り返って、正に冒頭に述べた問いに素直に応えてくれている。その一例を以下に紹介し、新たな臨床教育のいぶきを感じて戴ければと思う。

学生A:実習が終わった後も、あの患者様にはもっと何かさせていただけたのではないか、と振り返ることができた。患者様との出会いを一時のものだけにせず、これから出会う方のために、その人との出会いを活かせるよう何度も振り返り、反省的実践家(プロフェッショナル)になれるよう励んでいきたい。

学生B:臨床理学療法学を受講し、普通では学ぶことができない思考や臨床の生きた学びができたと感じています。それは理学療法としてではなく、医療職としての根本的な変化であったと感じています。この気づきは今後、私にとってかけがえのない財産になると思います。

学生C:疾病や障害を病(やまい)とみることで、患者ではなく、人として関わることができていく。前向きな思考だけでなく、後向き思考から傾聴する姿勢や尊厳といったプロフェッショナル思考を考えさせられた。それは将来を担う理学療法士に不可欠なことだと思います。

学生D:実習を振り返ることで身体機能面ばっかりに着目し、臨床像や心理面・環境面といった情報を疎かにしてきた。この授業で他の学生が担当した症例の発表を聞く中で、障害像よりも心理面や環境面が重要になっていた症例が何例もあり、4つの側面から考えられる理学療法士になっていきたいと思った。

以上は、ほんの一例であるが、学生からの言葉を大切にして次の学年に伝えていきたい。もちろん批判的な貴重な意見もあった。私自身、反省的実践家として改めるべき点を改め、表現に留意していきたいと思う。先に述べたように専門家(プロフェッショナル)教育は、事例検討を通した自他の経験から学ぶことで理解でき、特に患者中心のアプローチやチーム医療が何たるかは、自らの経験を振り返ることで専門家としての動機づけになっていく。この学びは、吉備の理学の新たな芽生えのような気がしている。

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