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【経営社会学科】【地域連携】【国際教育】「海業の現場」を学びに、香川へ

――インドネシア出身の学生が安岐水産を訪問、地域資源×国際ネットワークの可能性に触れる

New 2026年8月25日
  • 経営社会学科

2026年8月12日、社会科学部 経営社会学科の大西正泰 准教授と、4年生のADI RIYANTOさん(インドネシア出身)が、香川県さぬき市の株式会社安岐水産を訪問しました。漁村の課題と、新しい海のビジネスの可能性に触れる、大西ゼミ「個別最適化による越境学習」の実践の一コマです。


「海業(うみぎょう)」って、何だろう?

高梁から3時間。香川県さぬき市津田町の海沿いに、安岐水産はあります。創業は昭和40年。さぬきの新鮮な海の幸を加工・販売してきた企業です。

でも、大西ゼミの学生たちが学びに来るのは、単なる「水産業の現場」ではありません。ここで学ぶのは、「海業」という、新しい地域づくりの形です。

海業とは、漁業だけでなく、加工販売や観光、体験、教育、そして人財育成までを組み合わせて、漁村全体を活性化させようという考え方。魚を獲る・売るだけでなく、地域そのものが稼ぐ仕組みを作る――それが海業です。

日本全国の漁村は今、深刻な課題を抱えています。漁獲量の減少、若者の流出、高齢化。そうした中で、新しい道を切り開いている事業者の目線を直接学ぶ。それが、今回の訪問の目的です

訪問先:株式会社安岐水産様

安岐水産は、単なる水産加工販売業ではありません。「海業」の事例として、いま各方面から注目されている企業です。安岐社長からご提供いただいた会社資料をもとに、その姿をご紹介します。

沿革を簡単に振り返ると――1965年(昭和40年)、瀬戸内海のえびやいわしの加工でスタート。1970年にいか加工へ、1981年に「いか糸つくり」を業界に先駆けて商品化。1993年に国内で初めての生の寿司えびを開発し、2003年『讃岐でんぶく』、2014年『さぬき蛸』へと商品ラインを広げてきました。2019年に安岐麗子社長が就任し、現在に至ります。

① 「あおりいかの加工は日本一」

安岐水産の主力商品は、「イカの王様」と呼ばれるあおりいか。実は、あおりいかの加工では日本一を誇る企業です。1981年に「いか糸つくり」を業界に先駆けて商品化して以来、40年以上この分野を牽引してきました。そのほか、香川のブランド魚であるさぬき蛸、幻の高級魚 讃岐でんぶく(さぬきフグ)、あかにし貝製品など、瀬戸内海の恵みを最大限に活かした商品を全国へ届けています。

受賞歴が示す、その評価

安岐水産の取り組みは、公的な評価も数多く受けています。

・ 2016年 かがわ女性キラサポ大賞(女性活躍推進 香川県知事賞)
・ 2018年 四国少子化対策会議 女性活躍・子育て支援リーディング企業 優秀賞
・ 2019年 かがわ県産品コンクール 最優秀賞(香川県知事賞)
・ 2023年 ディスカバー農山漁村の宝アワード 奨励賞
・ 2025年 将来世代応援企業賞
・ 2025年 BRAND MANAGEMENT AWARD 2025 農商工連携審査員特別賞

「良い商品を作る」だけでなく、女性活躍、子育て支援、次世代の応援、ブランドづくり――幅広い分野で評価を積み重ねてきたことがわかります。

会社を「地域の交流拠点」に変える

安岐水産は、自社の枠を越えて、地域全体を盛り上げる活動を数多く手がけています。

・ お魚生活すすめ隊:小学校での出前授業、お魚さばき教室、稚魚の放流、ビーチクリーン活動など
・ ねこ海(ねこうみ)レストラン:海辺のレストランを地域の発信・交流拠点として運営
・ 津田港わくわくプロジェクト:地元漁師・漁業組合と組み、年1回のフェスティバルを開催(1回に1,000人超の来場者。2026年11月に第5回開催予定)
・ かがわ漁業塾との連携:漁師になりたい若者を、安岐水産が受け入れて育成
・ さぬき市津田地区漁業活性化協議会:安岐水産が中核となり、市役所、漁協、観光協会、地元銀行、宿泊事業者など17団体をつないで、津田町の観光・農泊プランを開発

魚を売る会社が、地域全体をプロデュースする会社になる。これが海業の姿です

インドネシアと日本をつなぐ「人財の還流」

そして、安岐水産のもう一つの顔が、インドネシアとの深い連携です。
安岐社長は1997年からインドネシア・ジャカルタでの食品輸出事業に取り組み、インドネシアとの関わりは約30年に及びます。この経験が、次のような取り組みへと発展しました。

・ 2013年 安岐水産で外国人技能実習生(インドネシア)の受け入れを開始
・ 2015年 経営者仲間とヒューマンリング協同組合を設立(人財受け入れの共同組合)
・ 2020年 ジャカルタで日本食レストラン「Cosmo Kitchen」を設立
・ 2024年3月 インドネシア・スマランに日本語学校「PT. Shiawase Human Ring Indonesia」を設立。校長は、安岐水産の元実習生であるナベラさん(スマラン国立大学卒業生)
・ 2023年以降、スマラン国立大学、スラバヤ国立水産大学、ブラウィジャヤ大学などインドネシアの主要大学と次々にMOU(協定)を締結
 

これまでにヒューマンリング協同組合が受け入れた海外人材は633名。現地で日本語を学んでいる方も67名にのぼります。

さらに2026年1月には、安岐社長が香川県池田知事に同行してインドネシア労働省を訪問し、県とインドネシア労働省とのMOU締結を支援しました。一民間企業の取り組みが、県レベルの国際連携に発展した、象徴的な出来事です。

▶海業の本質:一つに絞らず、地域と世界に開いていく
「単なる労働力の輸入」ではなく、「日本で学び、母国と日本を行き来する人財」を育てる――組合の皆さんが「シアワセ・ヒューマンリング」と名づけたビジョンです。加工販売という本業を軸に、地域の交流拠点、次世代教育、国際連携までを一つのビジネスに編み上げていく発想が、安岐水産の海業を先進事例たらしめています。

インドネシア出身の学生が、香川に学びに行く理由

訪問に同行したのは、ADI RIYANTOさん。インドネシアからの留学生で、現在、経営社会学科の4年生です。

ADIさんは、在学中からインドネシアと日本をつなぐビジネスの可能性を探り、海外展開する事業者たちとネットワークを広げ、すでに岡山経済新聞でも紹介された学生です

「なぜADIさんは安岐水産に?」その答えは、大西ゼミの教育方針にあります。

大西ゼミでは、「個別最適化による越境学習」を大事にしています。すべての学生に同じ課題を与えるのではなく、一人ひとりの関心、背景、将来の目標に合わせて、キャンパスの外や国境を越えた学びの機会を設計するのです。ADIさんにとって、安岐水産の訪問は、次の二つが重なる、ユニークな学びになります:

・ インドネシアとのネットワークを持つ、海を舞台にした日本の事業者を直接知ること
・ 地域課題を、グローバルな視点で解くビジネスモデルに触れること

つまり、「高梁と香川をつなぐ」のではなく、「インドネシア・日本・地方・海業」を一つの構想の中に見るという、ADIさん個人の学びの道筋が、安岐水産訪問を通じて具体化するわけです。

ADIの気づき

▶ 「稼ぐ方法を一つに絞らない」という戦略に驚いた
「インドネシアの漁村も、日本と同じように、若い世代が都市に流出して、残された人たちが漁業を続けている。でも、安岐水産を見ていると、商品開発や販売先の多様化、さらに教育機会の提供まで、『稼ぐ方法を一つに絞らない』という戦略が見えます。インドネシアに帰ったとき、こうした考え方をどう応用できるか、考えるきっかけになりました」

▶ ナベラさんの物語が、自分にとって希望になった
「特に印象的だったのは、社長が学生や地域のニーズをよく聞いて、それに応える形で事業を広げてきたということ。同じインドネシア出身のナベラさんが、安岐水産の実習生からスマラン日本語学校の校長になったという話は、自分にとっても大きな希望です」

「学んだ」ことが、次のアクションへ

高梁と香川。一見、関係のない二つの地域ですが、大西ゼミの学生たちの学びは、こうした往来を通じて広がります。ADIさんの場合、この訪問は、単なる「知識」の習得ではなく、「自分たちの地域課題を、グローバルな視点でどう解くか」という、具体的な構想へのステップになります。

大西准教授は、こう語ります:

▶ 大西准教授コメント:大学の学びを「人生の選択肢を広げるツール」に
個別最適化による越境学習というのは、「この学生には、このタイミングで、この経験が必要ではないか」という「読み」から始まります。ADIさんの場合、インドネシア出身であり、日本での大学生活を通じて国際ビジネスに関心を高めてきた。そこに「海業」という概念を、実際の事業現場から学ぶ機会を組み合わせる。すると、彼の中では、「ふるさとの課題を、新しい視点で解く」という、卒業後の活動へのロードマップが浮かび上がってくるんです。大学での学びが、単なる教科書の知識ではなく、「自分たちの人生の選択肢を広げるツール」になる――そういう学びの機会を、地域との関係を活かして、一つひとつ丁寧に作っていくことが、地方大学のミッションだと思います。

「実践の中での学び」を、続ける

高梁市内での、学生たちの地域活動は、今や「キャンパスの外」が当たり前になりつつあります。フリーコーヒーでの交流、地域づくり論での実践、そして地方創生の現場への往来。

こうした経験の積み重ねの中で、学生たちは、「地域課題は、遠い話ではなく、自分たちの選択肢の近くにある」ということに気づいていきます。

ADIさんのような留学生たちが、日本での学びを通じて、自分たちのふるさとへの向き合い方を変えるときもあれば、高梁出身の学生たちが、地域での経験を通じて、進路を決めることもあります。

経営社会学科では、こうした「実践を通じた、一人ひとりの成長」を見守り、支援していく学びの場づくりを、今後も進めていきます。

安岐麗子社長をはじめ、訪問を受け入れてくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。


吉備国際大学 社会科学部 経営社会学科は、地域社会・国際社会と結びついた実践的な学びの場を提供しています。