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【外国学科】重要無形文化財「蒔絵」保持者 室瀬 和美 先生の「生き方」講義「日本の漆」
- 外国学科
外国語学部外国学科の授業科目「生き方」にて、漆芸家で重要無形文化財「蒔絵」保持者の室瀬和美先生による授業が6月15日、岡山キャンパスで行われました。本年度の授業として9回目になります。
室瀬先生は「日本の文化を知ってもらう」をテーマに漆の日本のことばから世界に向けて発信するまでをわかりやすく講義されました。
◯ことばとしての漆
漆は木であるが、杉や松などのように木へんが付かない、また、さんずいが付くことから水に関係することばである。樹液を使う木という意味でもあることをスライドのイラストで説明されました。
◯漆の採り方と分布
日本の漆の樹液の採り方について、樹液を採ることができる太さになるまでに15~16年、そこから10年間取れるが、木として活動している4~11月にしか採れず、その10年間でガラスコップ1杯(200mL)しか採れない、貴重な樹液であるとのことです。
漆の分布について、主成分がウルシオールのものは、日本・韓国・中国、ラッコールのものは、ベトナム・カンボジア・台湾、チチオールのものは、タイ、ミャンマー、ラオスと、東南アジアから東アジアにかけてのモンスーン気候地帯にあります。これらの国では、日本と同じような漆器が使われています。
◯日本文化と漆、芸術分野のお仕事
室瀬先生の芸術分野のお仕事について紹介がありました。先達から漆芸は、「人に学ぶ、物に学ぶ、自然に学ぶ」と教えられたそうです。実際に作品を制作されている動画が放映されました。金属板に漆を塗って接着剤のように使う、螺鈿は、貝を適切な大きさに切り、漆を塗る、蒔絵はヤスリで金を擦って細かくしたものを蒔いて絵のように描くと技法の説明をされました。室瀬先生の作品は、メトロポリタン美術館や大英博物館にも所蔵されています。現在の創作活動ではリスをモチーフにした螺鈿に取り組んでおられるとのことでした。また、楽器のハープに蒔絵を施したり、クルーズ船飛鳥Ⅲのホールの壁画(高さ9m×幅3m)を蒔絵と螺鈿で装飾されています。大型の作品や現代的な作品も手がけられているとのことです。
◯日本文化と漆、器(うつわ)として
日本文化を外国の方に知ってもらうために、日常使う器について焦点をあてて説明されました。現代の私たちはご飯を食べる時にお茶碗を使いますが、字の如く本来は茶を飲むためのものです。明治時代より以前は、ご飯椀という木で作って漆を塗った器を使っていたそうです。お茶は熱いので、陶磁器のほうが冷めやすい、ご飯はゆっくりと食べるので木の椀だと冷めにくい、味噌汁も同じです。このように日本の料理では器の素材を選んでいたとのことです。室瀬先生はこの椀の特徴を生かして、冒険家の三浦雄一郎氏の要望に応えて、エベレスト登山の際に持参する強さと保温力のある漆器の椀を制作されたそうです。エベレスト登山から持ち帰った椀を点検すると、石や砂で椀の内側の表面が傷ついている他には椀の機能が損なわれてはいなかったそうです。それだけ軽くて頑丈な椀であったそうです。エベレストの別名、五穀豊穣の女神の住む山の意味の「ちょもらんま」とこの椀に名付けたそうです。
◯漆の歴史
つづいて、漆の歴史を紹介されました。日本の7200〜7000年前の遺跡から漆の塗られた木製品が出土していることから、およそ7500年前には漆を用いる安定した技術があったそうです。1300年前の正倉院御物に蒔絵の源流となる技法が施されているが現在には伝わっていないそうです。そこで、室瀬先生は、1年正倉院に通い、その技法を観察や試行を繰り返して解明されたそうです。また、伊勢神宮が1300年前から20年に一度建て替えがされますが、宝物の中には漆の技法が使われているものも、かたちのない文化財(制作技法のみが伝承される)として現在に伝わっており、このように日本には、かたちのない文化財とかたちのある文化財が同時にあることは世界中にないそうです。これ(この情報)を海外に行く時に役立ててくださいとのこと。
漆の世界に向けての発信は、安土・桃山時代からはじまったとされています。宣教師たちに日本から国外に持ち出された物に伊万里焼きや蒔絵があります。例えば、東慶寺の葡萄螺鈿蒔絵聖餅箱には、イエズス会の紋章が配されています。その後、江戸時代の輸出品漆器としては、マリーアントワネットコレクションが有名です。そしてウィーンの万国博覧会に日本から漆器が出展されるなどヨーロッパに日本文化が紹介されていました。18〜19世紀のヨーロッパでは、japanは漆、chinaは磁器を指していました。その後、漆は明治期に日本でlacquerと訳され、塗料のラッカーと区別がつかなくなってしまいました。室瀬先生が英語で指導するときには、困るそうで、ことばは慎重に扱われなければならない。これからはurushiがよいのではと考えられておられます。
◯日本の工芸を海外にむけて
室瀬先生は、日本文化をさらに海外に向けて発信するために、世界日本文化フォーラムにてその内容を年4回収録し、MOA美術館のサイトで配信されています。またスペインでは、有名シェフたちとコラボレーションし、漆器と西洋料理を組み合わせたイベント、イギリスでの漆芸の実演、ロンドンのビクトリアアルバート博物館での日本の現代漆器作品展などを開催されています。また、漆の木から漆器を作り、漆器は紫外線で分解され、土に戻り、そして、その土を使って漆の木を栽培するという一つのサイクルが出来上がることから持続可能性を持った活動でもあることを示されています。
◯感想
室瀬先生の授業から日本文化にある漆は古くからあり、また、ヨーロッパにも輸出されたもののまだまだ発信する内容はあるようです。伝承などが残っていない古い技法の探索には、足を運び、観察と再現に向けた試行を繰り返すなど行動の大切さについて学べたと思います。




