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【外国学科】オーニック(株)代表取締役社長 難波健先生の「生き方」講義「思いがけない出会い」
- 外国学科
外国語学部外国学科の授業科目「生き方」にて、オーニック株式会社代表取締役社長 難波健(なんばけん)先生による授業が、7月30日、岡山キャンパス(岡山市北区)にて行われました。本年度授業としては第15回目・最終回になります。オーニック(株)は吉備中央町にある、精密部品加工をしているハイテク企業です。放電加工機による精密加工を得意にし、社員の半数以上は障がい者です。
難波先生はまず、生い立ちからオーニックに入社するまでの人生航路を詳しく説明していただきました。父親の仕事上の関係で転勤が多かったそうで、転居、転校を繰り返す子ども時代だったそうです。スペインやタイに住まれたこともあります。一番しんどかった転校は、都内の某中学校だった。いわゆる「荒れた中学校」で、「ヤンキー」たちがにらみを利かせていた。いろいろ嫌がらせにあったが、父親などの家族が支えてくれた。しばらくすると、ヤンキーの代表格のような同級生が「勉強を教えてくれ」と頼みに来て、一緒に勉強するうちに親しくなり、他のヤンキー生徒からの嫌がらせがなくなった。人の痛みが分かる同級生だった。
高校生時代は、自転車からバイクに関心が移り、コンビニでバイトをしながら、バイクのレースに出場したりして夢中になった。楽しくて仕方がない日々であった。ある日、斎場の前で一時停止した際、亡くなられた方の顔写真が目に入った。自分を守ってくれた、中学時代の同級生だった。それに気付いた時、泣けた。後日聞いた話によると、心臓発作で亡くなったそうだ。彼との付き合いは全部で100週間だが、人との付き合いは期間の長さが問題なわけではなく、どれだけ濃い付き合いをしたか、どれだけお互い声を掛け合ったかが問題であると悟った。
大学は工学部材料力学に進んだ。毎日、実験、実験で忙しいところだったが、「技術はおもしろい」と思った。バイクは続けており、テクニックが優れていたので、3年生の時に、白バイ隊にスカウトされた。しかしながら、それは実現することはなかった。ある日、自分のミスでバイク事故を起こし、救急車で搬送され緊急手術を受けた。いくら粋がっていても、「こんな死に方はしたくない」とつくづく思った。症状が落ち着いた時、主治医に完治の時期を質問したところ、「完治しません」とはっきり言われた。未来が見えなくなった。単身赴任で不在がちの父親が、ベッドサイドで何も言わず寄り添ってくれた。それがありがたかった。
退院した後、時間はかかったが大学を卒業した。どんなに大変な時でも、必ず、助けがくる。学生のみなさん、そう信じて欲しい。未来が見えなかった時、岡山で会社を経営していたおじさんから自分に声がかかりました。「物つくりの世界に来ないか?障がい者がいる企業だ。」と。それが、現在、私が社長をしているオーニック。これまで多くの経験をし、大学では工学部で学んできたにもかかわらず、実務では通用しなかった。学歴は関係なく、障がいがある、なしも関係ない。社会の厳しさを味わった。先輩に多くを学んだ。とにかく、がむしゃらに働いた。何かができるようになると、子どもの頃のように楽しくなるものだ。仕事が楽しくなり、物つくりにはまった。働く中で、大切なものがなんであるか学んだ。誠実さ。誠実さがないと信頼はえられない。人としてどう向き合えるかが大切。本音でぶつかり合える関係性だ。
2011年末、オーニックに呼んでくれたおじさんがガンで他界する。直前に、病院に呼ばれ、おじさんから「弱い者の力になってやってください」と言われた。おじさんの死は、大きな喪失感となった。2012年早々、自分は36歳で、オーニックの社長になった。企業経営は利益をあげないといけない。それだけだろうか?と悩んだ。人生の目的は何だろう?会社には障がいをもつ人がいる。その人たちに寄り添いたいと考えた。製造業はおもしろいもので、製品は誰がつくろうと構わない。障がいを持つ社員と一緒に働こう。障がいを個性として、特別扱いはしない。幸せは、誰かと不自由を共有することなのだから。「人生に寄り添う経営」を目指すことにした。そして、今日に至っている。
難波先生から、学生にメッセージをいただきました。大学にいる時しかできないことがある。友だちをつくるべし。一緒に分かち合い、一緒に苦しむ、一緒に立ち会える友達だ。障がいのある友人をつくろう。豊かな人生とは何かわかる。そして、自分の直感を大切にしてほしい。後悔した選択をしないためにも、直感が大切。さらに、困難の中に、人生の成功要因がある。失敗を恐れないで欲しい。まずやってみる。チャレンジです。苦しい時こそ、大切なものが分かる。
学生との質疑応答のセッションがありました。ひとりの学生から、「難波先生は、いろいろな困難を乗り越えてこられましたが、何を大切にされてきたのでしょうか?」と質問があり、難波先生からは、「会社では学歴や障がいは重視していない。社員の誠実さを大切にしている。何をすればお客様が喜んでくれるかを考えられる人です。」と回答がありました。そして、ベトナム人留学生からは、「大学の時、多くの経験をされたと思いますが、なじめなかったことは何ですか?」と質問があり、先生からは、「多くの友人をつくった。楽しんだ。その友人のことを思うからこそ、言ったことが、その人を傷つける結果となっていた。その意味で、失敗の連続だった。」との回答がありました。
外国語学部外国学科では、「先達に学ぶ、人生のより良い『生き方』」をテーマとし、これまで日本を創ってきた人々、豊かで平和な社会を築いてきた人々の<生>の声を聞き、学生一人ひとりが、この国や社会のためにできることは何か、また自らが幸福な人生を送るために何をすればよいのか…等、それぞれが自分のあるべき将来について考える。そうすることで、今の自分を見つめ直すことができるようになる。また、自分の<志>を確認できるようになることを目標に、外国学科学生の必修科目として「生き方」を開設しております。




