キビコクNEWS
【経営社会学科】【社会貢献】佐野淳也教授が「新・ももたろう未来塾」第1回で講義 ―「しあわせで創造的な人口減少社会」を考える―
- 経営社会学科
2026年8月8日(土)、岡山県が主催する地域づくりの担い手育成講座「新・ももたろう未来塾」(第10期)の入塾式・第1回講座が開催され、本学社会科学部 経営社会学科の佐野淳也教授が講師として登壇しました。テーマは「創造的人口減少を可能にするまちづくり生態系」。県内各地から集まった22名の塾生を前に、人口減少を「止められない現実」として受けとめたうえで、「どう減るか」をデザインするための考え方と、県内外の地域事例を紹介しました。
「新・ももたろう未来塾」とは
「新・ももたろう未来塾」は、岡山県が地域づくりを担う若い世代を育てるために開いている講座です。第10期は2026年8月から2027年1月まで全6回で行われ、塾生は講義やグループワークを通じて地域課題の解決策を考え、最終回で成果を発表します。運営は株式会社SWITCH WORKS、協力はNPO法人岡山NPOセンターです。
第1回は、塾長である伊原木隆太・岡山県知事の挨拶と塾長講義に続き、佐野教授の講義、NPO法人岡山NPOセンター代表理事・髙平亮氏による「岡山県における地域課題の現状」、そして塾生によるテーマ検討・チームビルディングという流れで行われました。
講義① 人口減少は「止められない」。しかし「どう減るか」は選べる
講義はまず、データで現状を確認することから始まりました。
- 日本の総人口は約1億2,293万人(2026年7月1日概算値)。2070年には約8,700万人(2020年比で約3割減)、高齢化率は38.7%に達すると推計されている
- 岡山県の総人口は約181万5,000人で、26年連続で減少している
佐野教授は、人口減少を「自然減」「社会減」「構造変化」の3つに分けて捉えることを提案しました。生まれる人より亡くなる人が多い「自然減」は前提として受け入れる、転入より転出が多い「社会減」は自治体どうしの人の奪い合いから降りる、そして年齢構成そのものが変わる「構造変化」にこそ打ち手がある、という整理です。
講義② もう始まっている6つの現場
続いて、人口減少のなかでも新しい価値を生み出している6つの地域事例が紹介されました(県内4、県外2)
| 地域 | 取り組み | ポイント |
|---|---|---|
| 岡山県高梁市 | 高校魅力化 |
生徒が「JONANホールディングス株式会社」を設立 |
| 岡山県西粟倉村 | 起業エコシステム | 「百年の森林構想」以降、70社超が起業 |
| 岡山県真庭市 | 木質バイオマス | エネルギー自給率62.3%。域外に流出していた資金が域内に残る |
| 岡山県美咲町 | 賢い縮小 | 公共施設を集約し、運営を住民の自治組織へ託す |
| 徳島県神山町 | 神山まるごと高専 | 2023年開校。若者が地域に住み続ける新しい条件を生む |
| 島根県海士町 |
特産物開発 |
離島という制約を希少性へ転換し、産業と教育を同時に動かす |
6事例に共通するのは、①その土地にすでにあるものから始めた、②外部資金が切れても回る形にした(補助金は「起動費」であって「燃料」ではない)、③10年以上続けた、という3点です。
講義③ 創造的人口減少を支える4つのキーワード
佐野教授は「創造的人口減少」を、人口減少を与件として受け入れたうえで、地域に根ざした創造性と多様な働き方によって、持続可能でウェルビーイングの高い地域社会をつくっていく考え方として説明しました。その土台となる概念として、次の4つを紹介しました。
- 縮充:量は縮んでも、参加の密度は上がりうる
- 発酵型まちづくり:外から足すのではなく、すでにあるものが時間と条件のなかで別のものに変わっていく
- 地域共創エコシステム:「土壌(関係と信頼)」「苗床(支える仕組み)」「木(成果)」の3層で、次が生まれ続ける仕組みをつくる
- 多文化共生:受け入れる/受け入れられるという非対称を解き、「包摂から共創へ」進む
さらに、社会関係資本(結束型と橋渡し型)や「弱いつながりの強さ」、ソーシャルイノベーション(新結合と「新しい当たり前」づくり)、ウェルビーイング(「しあわせ」の語源は室町時代の「しあわせる=めぐり合わせ」)といった視点を紹介。『世界幸福度報告2026』で日本が147か国中61位にとどまり、とくに寛容さと人生選択の自由に課題があることにも触れ、「まちづくりは幸福の問題である」と話しました。
講義のまとめ ― 塾生へのメッセージ
講義は、次の6点にまとめられました。
- 人口減少は止められない。しかし「どう減るか」はデザインできる
- 外から足すのではなく、すでに在るものを組み替える(発酵・新結合)
- 単発で終わる事業ではなく、次が生まれ続けるエコシステムをつくる
- 結束型だけでは足りない。橋渡し型の「弱いつながり」を増やす
- 試みは「新しい当たり前」になって初めて社会を変える。その経路は4つある(制度・仕組み/ビジネス/ソーシャルアクション/地域づくり)
- 日本に欠けているのは自己決定感と寛容さ。だから、まちづくりは幸福の問題である
今回の講義で紹介した考え方や事例は、経営社会学科の授業や、地域と連携したプロジェクト型学習(PBL)にも生かしていきます。
開催概要
- 名称:新・ももたろう未来塾(第10期)入塾式・第1回講座
- 日時:2026年8月8日(土)
- 主催:岡山県(県民生活部県民生活課)
- 運営:株式会社SWITCH WORKS
- 協力:特定非営利活動法人 岡山NPOセンター
- 講師:佐野淳也(吉備国際大学 社会科学部 経営社会学科 教授)
- 講義テーマ:「創造的人口減少を可能にするまちづくり生態系」
- 塾生:22名(多様な分野から参加)
- 詳細:岡山県「新・ももたろう未来塾」ページ/SWITCH WORKS「新・ももたろう未来塾 第10期」




