吉備国際大学
平成29年度 私立大学研究ブランディング事業
エコ農業ブランディングによる発展的地域創成モデルの形成
事業の目的
①これまでの経緯と事業の目的
本学は、地元の強い要望を受け、平成2年の開学以来、現在までに、岡山県高梁市(本部・高梁キャンパス)に4学部、岡山市(岡山キャンパス)に1学部、および兵庫県南あわじ市(志知キャンパス)に「地域創成農学部」が設置されています。これらの立地拠点の中でも、特に、高梁市および南あわじ市では、人口減少による過疎高齢化が顕著に進行し、経済の停滞、産業の担い手不足、といった、地方都市・地方農村社会に共通する課題を抱えています。本学では、これらの課題に対し、各専門分野の特徴を活かしたさまざまな取組みを行ってきました。平成25年には、COC事業「だれもが役割のある活きいきした地域の創成」が採択され、両市のキャンパスで、地域創成に向けた多面的な取組みを行いました。地域創成農学部は、“地方農村社会の再生・創成”を目的として開設された学部であり、COC事業では、南あわじ市を対象とした、将来人口の予測、固有作物栽培の現状分析と商品化、獣害調査とジビエ食品の試作などの研究成果をあげました。本事業では、これまでの研究実績を集約し、さらに発展させるために、地域創成農学部を中核とし、南あわじ市において「エコ農業ブランディングによる発展的地域創成モデルの形成」を目指します。事業を通じて、地域を再生するための教育・研究を実践するとともに、学生と地域との協働で「大学エコ村」創りを試みます。この事業に関わることで、全国からの入学生が、出身地を含む各地で農村社会の再生・創成に発展的に貢献できる実践力を身につけることが期待されます。
②大学の将来ビジョン
本学は「学生一人ひとりのもつ能力を最大限に引き出し引き伸ばし、社会に有為な人材を養成する」ことを建学の理念としています。本学の将来ビジョンを、「地域創成に実践的に役立つ人材を養成する大学」と設定し、事業を通じて、地方都市の課題に関わるこれまでの取組みをさらに発展させ、建学の理念を具現化します。
問題の背景と研究課題
地域の課題
兵庫県淡路島は、古代より「御食国(みけつくに)」として知られる、関西圏の主要な農業地域です。特に島南部に位置する南あわじ市は、三原平野を中心とした三毛作地域であり、タマネギ、レタス、ハクサイ、キャベツなどの一大生産地でもあります。しかし、これらの生産は多肥多農薬農法で成立しており、土(農地)や水(農業用水)への負荷が大きいことが課題です。また、かつては小規模酪農が盛んであり、耕畜間で家畜の糞尿を介した循環型農業が成立していましたが、酪農の衰退に伴い有機肥料が不足しています。担い手に関して、同市は人口4万7千人(2015年)ですが、2060年には半減すると予測されています。同市では農業の就業者が最も多いのですが、60歳以上が7割を占め、高齢化も進行しています。人口減少と高齢化は、農業の担い手不足や集落維持機能の低下を招いています。したがって、現状の課題を踏まえた新たな農業のあり方を考究し、これに基づいた地域活性化の対策が求められています。
研究テーマと研究課題
地域創成農学部の最大の特色は、農作物の生産から食品加工・農業経営・流通まで、六次産業化に必要な総合的知識を身につける教育プログラムにあります。加えて、地域との連携による現場実践教育を通じ、地域創成を担うリーダーの養成を目指しています。この特色を本事業の枠組みとし、「エコ農業ブランディングによる発展的地域創成モデルの形成」を研究テーマとします。各研究課題として、まず、農業生産において、肥料や農薬の大量投与によって失われた土中微生物の多様性を、バイオスティミュラントを用いて復活させ、さらに農業用水を浄化します。低資源投入型農業で生産された農産物の高付加価値化を実現します。また、放棄されている里山管理の適正な方法を探索します。次に、農業廃棄物や余剰生産材料を有効活用した化粧品、有機肥料、獣害対策の一環として捕獲された野生獣のジビエ食品、淡路島の固有柑橘であるナルトオレンジを用いた特産加工品など、農業ブランド商品の開発を行い、新たなマーケティング戦略を立てて実験的に販売します。COC事業などですでに連携体制が確立されている市やNPO、農協、商工会との連携を強化し、地域に成果を還元してまいります。
研究課題一覧
課題② バイオスティミュラントの利用による土壌作りと水質浄化
課題③ 植物クリニックセンターの運営と作物の病害診断・防除・予防
課題④ クルマエビ漁の再生
課題⑥ 忌避作物栽培による獣害対策
課題⑨ 間伐竹材を用いた有機肥料の開発
課題⑩ イノシシ・シカのジビエ食品の開発